2017年11月7日火曜日

エッセイ・・・「生きるスピード」


 毎日通っている職場までチャリで10分の道のり。今朝はお天気も良くいい日和だったので、ジョイコを家に置き去りにして(愛車のチャリの名前(^^;)、少し早く家を出て久々に30分歩いての通勤。いつもクルマよりずっとゆっくりの自転車だから、まわりがよく見えてると思っていたけど、歩いてみるとさらにいろんなものが目に入ってくる。

 いつも通っている道にこんな立派な木があって、大きな青い実を付けてることなど気づくことがまったくなかった。「なし」だろうか「りんご」だろうか・・・、ゆっくり歩いているといろんなことを連想したり・想い出したりする。その木の様子からかふと故郷の20才で亡くなった親友のことを想い出した。

 高校時代に違う高校で何の接点もなかったが、地域の音楽的な評判からお互い惹き合いバンドを組んだ仲間。数年後といっても若干20才でのちにプロ・ツアーから声がかかるようなテクニック・感性あらゆる面で天才ギタリストだった。ジャズ・フュージョン・ロック何でもこなしたし、自分の歌を支えてくれる味のある音も出していた。短い間だったけど生活でも同じバイトをしたりといつも一緒にいた親友だった。ファーストネームは記していいだろう。テツオといった。

 その天才ギタリスト・テツオは20歳を過ぎてまもなくバイクの事故で亡くなった。後ろに彼女を乗せていてその彼女を守るように・・・。彼女は軽症もテツオ本人は内臓破裂だったとのこと。自分も若干20歳で親友の葬式に出るとは想像もしてなかったが、その姿をみると外傷はほぼなく、顔もとっても綺麗で少し笑っているようにも見えた。納棺師(おくりびと)の仕事もあったのか・・・。

 さて、お葬式でのこと。家族はもちろん友人たちが泣き崩れる中、テツオの祖母の言葉と表情が忘れらなくて、その場面を何故か木を眺めながらふと思い出したのでした。彼のおばあさんは少し笑みさえ浮かべて「この子は20年の命をもらって生まれてきたんだよ。ありがとう。」と。その時はこのおばぁちゃん、何で穏やかな表情でそんなことを言えるうんだろうと思ったけど、いまになって何となくだけどその言葉に込められた思いが少しわかるような気がしてきている。

 天才は短命という。普段天然でニコニコしていて、時折ぼーっとしてるような穏やかな性格だったが、ひとたびギターを弾くとフレーズは一発でビシっと決めるしセンスも抜群だった。そして何より老若男女誰からも愛されるキャラだった。

 ふと、あるメロディを連想した。アーティスト「さかいゆう」が「君と僕の挽歌」という曲でかなり前にブレイク。音楽家として成功を目指した親友が18歳で亡くなったことがきっかけで、さかいゆうさん本人が変わって音楽家を目指すことになった。との逸話があり、死を悼む「挽歌」として「How's it going ・調子どうですか」と天国の親友に歌い・語りかけている。


 エッセイだけに散文となるけれど、たった30分歩いてというか、正味5分ふと樹を見ている間にいろんなことを思った。「生きる速度って何だろう?」人生半ば過ぎてもまだ考え思い悩み迷う。早く熱く太く駆け抜けたかった…今からでも。一方コツコツと目の前あることを焦らず確かに感じながらゆったり歩みたい。相反して同時に思う。

「How's it going 、テツオ!調子どうだい!?、俺はこんな歳になって、また音楽活動再開して走り始めたよ。お前の分までなんて偉そうなことは言えないけど、この声が枯れ果てるまで歌い続けていくわさっ」と心の中で天国に友に語りかけてみる。

 ここまでいろいろあったけど、ようやく馴染んできた「働く・食う・歌う・笑う・寝る」のシンプル・ライフ。「持たないけど持っている・元気だけど静か」そんなライフスタイルが何となく自分らしいと感じらるようになってきた今、また胸を焦がして生きていきたい思いも変わらずある。

 テツオのおばあちゃんが言う通り決まった命をもらって生まれてきたとしたら、走ったって、歩いたって、どっちもいいじゃない。その時々にしたいと思ったスピードで生きていけば。それが傍目から見て焦っているように見えたり、いじらしく感じられたりしても。そのとき一番自分らしいと感じられれば。多少気まぐれでも。と自分に言ってみた。

 このように文章を書いたり、職歴として情報誌の編集制作をしたりとクリエイティビティに興味がないわけはないが、音楽においてオリジナルソングは数曲しか書いたことがない。楽曲づくりに強い興味があったらきっと既にのめり込んでいただろう。それ以上に歌うことがシンプルに好きなんだろうし、歌唱についての向上心もなくなることはなさそうだ。

 これからも自分の心に響いた楽曲を歌って行くのだろう。ただ、何をしていても歌も生活もまた懲りずに恋もすべて自分らしく「歌うように生きていきたい」とあらためて思うわさ。Life is music・・・。よくもわるくも「あなたらしい」「わたしらしい」を感じて。

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