2017年8月16日水曜日


◆今は笑い飛ばせる味のある男の話
(エッセイ・・・嫌いだった父・好きだった音楽と私)

 音楽活動再開して間もなく父の命日を迎え、改めて向き合うことが増えてきました。本来ならHPやブログが適当だと思いますが(4/13現在)、まだ始めていませんので今回ここで少し父のことを書いてみたいと思います。亡くなった父は観光バス、トラック、タクシーと運転業を主な生業としていて、特に観光バス運転者だった頃は当時小学校低学年だった私をガイドの隣に乗せて、1ヶ月近くも学校を休ませ旅行気分で全国あちこちへ連れていってくれた想い出があります(バスガイドさんの膝に乗ったりスカートをめくってよく頭をたたかれましたー(^^;)

◆思春期、父がほんとに嫌いだった。

 父は音楽好きでアコーディオンやエレクトーンを弾きながらよく演歌を歌っていた記憶があり、「流し」の真似事のようなこともしていたと聞いたように思います。歌っているときの父は好きだったけど、そのほかはほぼすべてといっていいほど嫌いだった。私にとっては離婚を3回もして母が4度も変わるといった半面教師であって、とにかく家にいたくなくて結果、勉強・音楽・スポーツに熱中し外に目を向けて生きてきて、グレなかったことが不思議なくらいだと我ながら思ったりもします。

◆不幸だと思っていた幼少期

 自分の苦悩・悲しみをひけらかすつもりはありませんが、中には「今日からお前のお母さんだぞ」と父が連れてきた男子2人の連れ子がいる女性は、父が運転業で夕食時いないことが多かったためか、自分の子供たちと私の夕食のおかずを明らかに違うように差別したりなど、他にも書けないようなことが数知れず・・・。誰の人生も普通の人生なんてものはないと思いますが、なぜ自分が…、自分だけが…、他の友達のような子供とは違い過ぎてずいぶん辛く悲しいことや切ないことが多く胸を詰まらせ人知れず泣いた日々も少なくなかった幼少時代だったと思います。今思うとあんな父には絶対なるまいという反骨精神のエネルギーが何とか後の健全な精神を支えていたように思います。(とはいうものの自分も一度結婚生活失敗しましたけど・・・)

◆切なさを知ったサウンド

 なぜか最初に買ったレコード、確か小学校5年か6年の頃にカーペンターズのyesterday once more や super star 、close to you を誰もいない一人きりの家で聴いて歌って、そのメロディがほんとに心に沁みて・・・、よく涙していた。そのせいか今も音楽を聴いたときに、リズムやグルーヴ、歌詞などいろんな要素の中で、やはりメロディが一番最初に響いてくるように思います。リンク⇒ Carpenters - Superstar

◆今気づく男の魅力、憎み切れない父

 さて、父はフロントガラスから少ししか顔が出ないようなずんぐりむっくりのチビなくせに、景気のいい時にはムスタングなどのアメ車に乗り回すような見栄っ張りでした。でもそんなところがなんだかちょっとお茶目で、嫌いなのに憎めないとも感じていたんだろうと思います。腹が立つのがイケメンとはほど遠いのに、案外マメなところがあったようで女性にはモテたらしい。また男友達からも「しーさん」と慕われ、誰かれいつも我が家にやってきていた記憶があります。そして葬式では私が知らなかった男友達や音楽仲間などが「味のあるいい男だった」と口を揃えていう言葉を聞くと、悔しいけれど愛おしい気持ちでいっぱいになったことを忘れません。




◆「味のあるいい男」

 自分とは生き方も考え方も価値観も何もかも違うと思って嫌っていた父。「味のあるいい男」なんともいい響き。自分も知らないうちに、ずっとずっと前から父に対してそんな気持ちがどこかにあって、良くも悪くもそれが今の私の人格形成や音楽では、音や声を形作っているのではと、人生半ばを過ぎ音楽活動再開して最近特に意識するよなりました。振り返れば自立心の育成などほかにもよかったこともたくさんあります。そのうち、ホームページやブログなども始めることになると思いますが、またいつかそんな思いに向き合い、自分の生きている・表現している証として残していこう。

◆気が付けば自分も人生半ばを過ぎて

 大きな失敗したり、うまくやれなくて家族を失ったり、命がけの恋に破れたり、自暴自棄になったことも何度かあったけど、人生捨てたもんじゃない。まだ歌える声がある。跳べる身体がある。最初の母と父が出会う奇跡がなければ今の自分がいないはず。道ひとつまた時が一瞬ずれていたら、出会ってなかったかもしれない。まさに時を超えたミラクルだ。そんなことを想って深呼吸してみたら感謝の思いが溢れてきた。

◆最後に

 私が12歳のときに4番目というか一番最後に私の母になってくれた当時確か19歳だったお母さん・そしてその母とほんとに悪い奴だけど憎みきれない父との間に生まれた3人の妹たちが大好きで愛おしい。何より嬉しいのは皆が存命中もまた今はもういない父を本当に愛してやまないこと。妹たちは揃って皆立派な女性・母となり実家のある石川県で根をはりしっかり母を支え暮らしてくれている。だから自分はいつまでも寅さんみたいに風来坊でいれるのだろうか…。でもそんなみんなと家族になれて本当に幸せだと思いながら、また普通に仕事しながらも再び歌人(うたびと)として動き始めた息子・兄を温かく見守り応援してくれていることに心から感謝したい。

うたびと・Shuken  2017.4.13

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